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     孔雀物語

 

 

今回、樹フィルハーモニー管弦楽団第2回定期演奏会で、

コダーイ作曲 ハンガリー民謡「孔雀」による変奏曲 を演奏いたします。

 

ところで、皆さんがよく知っている「変奏曲」といえば、おそらくモーツァルトの「きらきら星の主題による変奏曲」だと思います。有名なあの一つのメロディーが、リズムを変え、テンポを変え、第12変奏まで色彩豊かに展開していきます。

 

しかし、今回演奏する「孔雀」の場合は、少し複雑です。

 

たった8小節の曲から、200小節以上からあるフィナーレまで、長さは自由自在でバラエティー豊かです。またメロディーも原型からかなり逸脱しているものもあるため、この曲のどこからどこまでが一つの「変奏曲」となるのかを理解するのも困難です。

 

この曲はもともとコダーイの合唱曲で、歌詞がついています。

そこで私はこの作品を、一曲ずつの「変奏曲」としてではなく、歌詞をもとに1幕3場の大きな舞台作品としてとらえてみました。この曲を聴くときに、この物語を思い描いていただけるとまた違う楽しみ方ができると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台 「孔雀物語」

 

(前奏曲)

 

戦争の嵐が渦巻くハンガリーの小さな村。

ここでは、戦いで亡くなった人々が「孔雀」となって村を守るという伝説があるという。

ほら、見えるだろう、今も薄淡色の孔雀がゆっくりと、そして優雅に舞っているのが。

 

(第一場:第1変奏~第6変奏)

 

人々は一日一日を明るく力強く生きている。

大好きなハンガリー民謡を歌いながら、今日の恵みに小さな幸せを感じて生きている。

 

(第7変奏~第9変奏)

 

今日は村の青年、イシュトヴァーンとペトラの結婚式だ。教会の鐘はこだまし、村人たちは自慢のトカイワインを運び込み、グラーシュを煮込み、準備に余念はない。

村上げての結婚式は大盛り上がりで、若者たちはツィンバロンやヴァイオリンを奏でて、祝福の歌を歌う。

新郎新婦はというと、完成したばかりの新居で二人きりで愛を語り合っている。そうして夜は更けていくのであった。

そんな幸せな二人の新居に、不穏な空気が影を落とし始めている・・・

 

(第10変奏)

 

場面転換

 

(第2場:第11変奏~第14変奏)

 

イシュトヴァーンとペトラの新居

不安げに窓越しに外を見るペトラ。

夫のイシュトヴァーンは戦地に送られてしまった。

「仕方がないこと」と自分に言い聞かせる。

便りは来ない。

「まさか・・・」考えたくないが、あまりの寂しさに涙が溢れる。

そしてある日・・・ 最悪な事が現実となった。

 

夫の戦死を通知する手紙。 現実を受け入れられず涙もでない。

 

しかし時間の経過とともにイシュトヴァーンとの楽しい思い出の数々を思い出し、そして二人の愛の最後を受け入れなければならないという現実を受け止め、ペトラは慟哭する。

 

葬送行進曲。

 

戦死した兵士たちが遺骨となって村に帰ってきた。むせび泣く村人たち。なんでこんな辛い目に遭わなければならないのか。怒りがこみあげてくるものの、どこにぶつけたらいいのかわからない。

村中が喪に付している。

 

ある夜、ペトラが湖のほとりでたたずんでいると、空から薄い色の光が差してきた。

それはだんだん鮮やかな光を放ち大きくなって自分の上に近づいてくる。

それは、大きく羽を広げた美しい孔雀。

「ペトラ、泣かないでくれ。僕はずっと君の傍にいるよ。君をこれからも見守っている。どうか泣かないで!」

イシュトヴァーンは神聖な孔雀の姿となってペトラの元に帰ってきたのだ。感涙にむせぶペトラ。

「ああ、あなたは帰ってきてくれたのね!あなたが見守って下さるんだもの。私、これから強く生きていくわ!」

 

(第3場:第15変奏~終曲)

 

やがて戦争は終わった。

まだまだ混乱が続くなか、それでも人々は前を向いて精いっぱい生きていく。

ふと空を見上げると亡くなったたくさんの兵士たちが、孔雀と化して村に帰ってきた。それはもう、空を覆いつくさんばかりに!

そして村人たちと一緒に歌い上げるのであった。

「すべては必ず変わる!平和は必ずやってくる!そして新しい時代が、大空に向かってほほ笑えむその日が必ずやってくるのだ!」

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